「こじれたっていいのよ。私は自分の気持ち否定されるなんてまっぴら! 振られたからってなんでそんな風に言われなきゃならないの」


そして新見は俺の腹に渾身の蹴りを繰り出す。


「ごほっ」

「もうアンタなんか知らない!」


突き上げるような吐き気に襲われてよろける。マジで痛い。腹はダメだろう。犯罪だ。


「おい、サトル大丈夫か?」

「サトルくん!」


颯が駆け寄ってきて、サユちゃんは俺を支えるように腕にしがみつく。


「おい、新見。校内暴力は止めろ」

「うるさいな! 先生は生徒の話に口を出しすぎ」

「こら待て!」


止めに入る木下の手を振り切り、新見はもう一度俺を睨むと真っ赤な顔で力一杯俺の体を押してドスドス大きな足音を立てながら戻っていく。


「うわっ」


女の力とはいえ全体重をかけて押されればよろける。まして、腹をかばっている今の状況では。


「きゃ」


俺を支えてくれていたサユちゃんをを押しつぶすような格好で俺は廊下に転がった。

廊下に大きな音が響き渡り、周りの人間が息を飲んで黙りこんだ。
一瞬目が回ったがすぐ正気に戻り、俺は一緒に倒れたサユちゃんの方へと向き直る。


「ごめん、サユちゃ……」