それから数日後の放課後。颯と並んで部活に向かっている途中、職員室の前で木下とサユちゃんを見つけ、思わず立ち止まる。

二人の距離は近い。
サユちゃんは今日は日直だったのか、各クラス共通の黒い表紙の日誌がサユちゃんから木下へと渡される。木下は一言二言話して隣の進路指導室にサユちゃんを誘導していくが、彼女は笑って首を振る。

木下は少し考え込んだ後、サユちゃんに何かを話しかけながら頭をくしゃくしゃとかき、彼女は嬉しそうに笑う。相変わらず恋人同士にも見えそうな仲の良さだ。


「どうした? サトル」

「んー、なんでもねぇけど」


と言いつつ、視線を二人から離せない。

サユちゃんは俺のことが好きだ。
ちゃんと分かってるけど、俺はまだ自信がない。
その状況でのこの二人の仲の良さはやっぱり気になるし苛つく。


「心中穏やかじゃないよねぇ? 中津川くん」


背中の方向から聞こえるジメッとした声。
振り向くと、片手に日誌を抱えた中村が立っていた。ああコイツ、今日は日直だったか。

中村の口元は笑っているが、全身からはおどろおどろしい刺の立った空気が放出されている。
お前、全然ポーカーフェースになってないぞ。何イライラしてるんだよ。