「一年生の子だったよ。嫌味ったらしい口調で、どんな手使ったら木下先生落とせるんですかーとか、なんかもっと卑猥なことも言ってたけど。女の子がああいうの言うと下品に聞こえるよね」


卑猥なことってどんなんだよ。
一瞬頭のなかでいろんな想像をしてしまい、俺は慌てて頭を振る。
いかんいかん! 顔が熱くなってきた。

つか、サユちゃんそんなこと言われて平気なのか? なんか真っ赤になって固まりそうだけど。


「それでサユちゃんは?」

「私、木下先生とはなんにもないよ、ってそれだけ。相手にしない方が無難だってちゃんとわかってるから大丈夫よ。サトルくんも気にすることないって」

「はあ」

「じゃあねー」


手に持っていたノートをひらひらさせながら和奏先生は廊下を進んでいった。


「大丈夫、……かなぁ」


和奏先輩はおそらく俺よりサユちゃんを知ってる。その彼女が大丈夫だというなら大丈夫なんだろう。
そう思うのに、胸のモヤモヤは消えなかった。