隣の席の攻防を楽しんでいる俺の後ろ襟に、ゴツゴツした指が食い込んできた。
気持ち悪い上に痛い。
「さぁ。行くぞ中津川。サユちゃん先輩のところへ」
そして後ろの席に座るコイツはホントめんどくせぇ。
「なんで疑う、夏目」
「俺の可愛いサユちゃん先輩に近づく変な虫は許さねぇ」
変な虫はお前だろ!
俺こそお前を駆除してぇよ。
その後散々押し問答を繰り返したが、俺もサユちゃんには会いたいという欲求が捨てきれない。
コイツが一緒ってのはすこぶる気に入らないけれど、二年の教室へ向かうことにした。
立ち上がったところで、いきなり腕を掴まれる。
掴んだのは、言い争いをしている3人組のうちの一人、和晃だ。
「明菜、心配すんな。コイツも行くって」
「はぁ?」
話が見えない。
なんだ?
よくわからねぇけど勝手に決めんなよ。
「いいよな。……ええとなんだっけ」
「お前、名前も覚えてないくせに……」
「いいじゃん。クラスメートになったんだし。
俺、荒川和晃(あらかわ かずあき)こっちは雨谷珠子(あまみや たまこ)。俺の彼女。で、こっちが新見明菜(にいみ あきな)、俺の幼馴染」
なるほど。そんな関係性だったのか。