「あはは。怒った？ サユは、サトルくんには言いたくなかったんじゃないの？ いい噂ならともかく悪い噂じゃん」
「悪い噂だからこそ。俺がなんとかしてあげなきゃって」
「何をどうするのよ。勝手に広がっていくものに対抗のしようないでしょう」
「そりゃ、そうなんですけどっ」
苛立ちを露わにすると、和奏先輩はくすくす笑った。
「素直だよねぇ、サトルくん。だからサユは安心するんだろうね。裏表無いもんね。ホントいい性格」
「先輩、バカにしてる？」
「してないよ。感心してる。サユはさ、無意識に表の顔作っちゃうとこあるじゃん」
「そうですか？」
確かに、あの笑顔が時折仮面のように感じる時はあるけど。
「サトルくんが絡んでる時だけ、それが取れる気がする」
「でも……」
それでも、俺を頼りにしてくれてるわけじゃない。
元に今も、噂に一人で立ち向かってるんじゃないか。
「サユちゃん、傷ついたりしてないですかね」
「大丈夫じゃない？ 笑って交わしてたし。木下先生が好きっぽい珍妙な子はちょっと突っかかってきてたけど」
「サユちゃん以外にそんな女生徒いるんですか？」
果てしなく失礼発言を繰り返す俺達。
