とりあえず、噂の発端は中村だろう。
どうすればあいつを懲らしめることが出来るのか。
教師用玄関の真上にある窓からぼんやりと外を眺めながら、無い知恵を絞って考えているが何も思いつかない。


「うーん」

「何悩んでるの? サトルくん」

「なにって。……あ、和奏先輩」


サユちゃんの友達の和奏先輩だ。珍しく一人で、ノートを手に持っている。


「和奏先輩。サユちゃんは?」

「サユなら木下先生の手伝いしに行ったけど」


また木下か。
学級委員ってこともあるんだろうけど、木下もサユちゃんを構い過ぎなんだよな。
それが噂を加速させているという気もしないでもない。


「先輩、知ってました? 最近流れてるっていう俺達の噂って」

「噂? あー、サユが二股かけてるとかいうヤツ? やだ、まさかそれ信じたんじゃないよね、サトルくん」

「そんなわけ無いじゃないですか。……ただ、俺何も相談とかされなかったから。噂に気付いたのも昨日だし」

「へぇ。平和そうでいいねぇ」


感心したような口調だけど、バカにされたような気持ちしかしない。
むっとした気分を隠さずに表情に表すと、和奏先輩はふいに笑った。