「それ、どの程度広がってるんだ?」

「さぁ? 俺はクラスの女子から聞いたけど?」


颯はモテるから、割と女子に囲まれてる。
ってことは、キャピキャピ騒ぐタイプの女子の中では広まってるってことか?

噂がどの程度の規模で広がっているのか分からないけれど、女子の中でそれなりに浸透していたのなら、サユちゃんも新見も知らないはずはないんじゃないか?

二人をそれぞれ思い出してみても、俺の前で嫌な顔一つしたことがない。
いや、新見は元々笑わないけど。不満とかそういう意味での嫌な顔はしない。

俺だって絡んでる話なのに。
なんで二人とも俺には相談しないんだよ。

苛立ちを感じながら体育館の影から三階の美術室を見上げる。
いつの間にか明かりが消えている。ということはサユちゃんは先に帰ってしまったのだろう。

付き合い始めから、なんとなく感じてた距離。
そういえば、人の見ているところではサユちゃんはあまり一緒にいようとしなかった気がする。
デートだって「家の方がいい」って言ったり……。

それは、この噂のせい?
これ以上広めない為、とか?

……まただ。

湧き出してきた不快感に、俺は唇を噛みしめる。

守りたいのに、いつの間にかまた守られてる。

俺はそんなに頼りない?
俺が年下だから?

どうして俺に頼ってくれないんだよ。