「あ、私が手伝う」

「え? いいよ。サユちゃんお客さんなのに」

「いいのいいの。台所、おじゃまします」


誰も居ないのにペコリと頭を下げ、サユちゃんはキッチンに入ってくる。


「今日おばさんは?」

「今日は父さんと実家の方に行ってる。なんかゴメンな、ルイとかがうるさくて」

「ううん。私、ルイちゃん大好きだし。賑やかなのも大好きだから嬉しい」


みんなでマルだから?
そう問いかけるのはイジワルかな。

彼氏彼女になったのに、俺達の生活は殆ど変わってない。
学校ではサユちゃんの周りにいつも誰かしらいるし、帰りだって一緒にはならない。

みんなで仲良くしたいっていうサユちゃんの気持ちは分かる。
だけど、独占したい気持ちも捨てきれない。
それって男としては当たり前の発想だろう?


「ルイちゃんたちはジュースでいいのかな?」

「あ、これ出してやって」


冷蔵庫から炭酸飲料を取り出し、サユちゃんに渡す。
指先がぶつかって、サユちゃんの動きが途端にギクシャクする。


「あ、は、あの。グラスは」

「ああ。こっちこっち」


いちいち反応するところとか可愛い。もう最高に可愛い。


「これもお願い。サユちゃん」


わざと手に触れるようにしてグラスを渡すと、彼女の顔はみるみるうちに真っ赤になる。


「る、ルイちゃん! 手伝って」


耐え切れなくなったのか、サユちゃんは助けを求めるようにルイを呼んだ。
普段皆でいる時は気づかなかったけど、サユちゃんって本当に照れ屋だ。
意外な一面に、俺はますます彼女に夢中になる。