それでも、電話で話す彼女の声は優しいし、彼女と繋がることが出来たことは単純に嬉しい。

【今日の帰りの夕焼け、すっげキレイ】

写メ付きのメールを俺はよくしたためる。

【わあ、すごく綺麗】

言葉はシンプルな彼女は、別の日にスケッチブックを持ってきてくれる。


「ほら、サトルくんが見せてくれた夕焼け」


俺の写メが、彼女の手によって描かれる。
感激して、馬鹿の一つ覚えみたいに「キレイ、キレイ」と褒めると、彼女ははにかんだように笑った。


「……誰にも言ったことないんだけどね。私、実は絵本作家になりたいんだ」

「絵本?」

「うん。いつか誰かの心に残るようなものを書きたいなぁって思ってて。だから今は練習中なの。気に入ったものは何でも描いてる」


その夕焼けが、彼女のお気に入りになったことがとても嬉しかった。


「いつか見せてよ。絵本」

「恥ずかしいから、ダメ」


スケッチブックを奪い取るようにして、彼女は頬を染める。


「サユちゃんって案外恥ずかしがり?」

「だって。物語を読まれるのは心の中見られてるみたいだもん」

「見たい」

「イヤ」


押し問答をして、やがて笑って。
二人きりでいる時は、会話も弾むし本当に楽しい。

不安になることなんてないよな?
サユちゃんは、ちゃんと俺のこと好きだよな?