「きゃー明菜、何してんの!」
「何って、私は同級生が担任に叱られるのを阻止してあげただけよ」
「だけってお前……っ」
真っ赤になった鼻を押さえて、明菜と呼ばれた女子を睨むのは夏目。
しかし女子の方は動じた風も無く、むしろその友達と思われるショートヘアの女子の方がわーわー騒いでいる。
その甲高い声に、俺達のまわりに一気に教室中の視線が集まる。
これはこっ恥ずかしい。
夏目は痛みで悶絶していてそんなことどうでもいいようだが、正気を保ってる俺にとってはとっとと逃げ出したいほど恥ずかしい。
しかし、この状況を沈静化したのは、そもそもこの状況をつくりだした隣席の女生徒だった。
「もう担任くるわよ。さっさと座れば」
騒ぎ立てるのが馬鹿みたいに思えるほど落ち着いた口調でそう言い、周りのじろりと睨みつける。
その眼力に凄みを感じたのか、夏目は口をパクパクさせながら頷いた。
「明菜、入学式早々他の男子びびらすなよ」
後ろからもう一人男がやってきた。そこそこ背が高くそこそこ整った顔のそこそこくんは二人の女子の間に割って入るようにして笑う。
「せっかく同じクラスになったんだし仲良くしようぜぇ」
「いい加減そろそろ切りたいわ、腐れ縁」
「うわー、明菜がツメテェよ。珠子ー」
どうやら同じ中学からあがった3人組らしい。ちょっとした小劇場になっている三人を、俺と夏目は呆けたように見つめていた。
……おいおい、初日から濃すぎるぞ。