やがて、サユちゃんが俺のシャツの裾を引っ張る。


「……新見さんって、凄いね」

「うん」

「私も憧れちゃうかも。サトルくんとも、お似合いだと思う。……あのね、やっぱり」


サユちゃんが寂しそうな顔をするので、俺は焦って取り繕う。


「確かに揺れたけど、でもやっぱり俺はサユちゃんが好きだし。……できればちゃんと返事貰いたいんだけど」

「返事?」

「俺のこと、好き?」


そう尋ねると彼女の顔が真っ赤になる。
そういえば、彼女が好きなのは木下じゃなかったんだっけなんて思い出し、俺はちょっと弱気になる。


「それとも、木下先生のほうが好き?」

「え? 木下先生?」


驚いたように俺を見上げる。


「俺、サユちゃんは木下先生が好きなんだと思ってた」

「好きだよ。面白いし。話しやすいから」


でも、と彼女は言葉を一度区切る。


「特別とかじゃないの。普通に好き。みんな好きと一緒」

「……じゃあ俺は?」


傾いた日差しは赤く染まり、俺達の頬を染めていく。


「ずっと特別だった。一緒に絵本読んでた頃から」

「好き?」

「……なんで何度も聞くの」

「だって聞きたい」


みんなでマルがいい君は、こうして追い詰められるのは嫌なのかもしれないけど。
俺はもう小さなガキじゃないから、その好きが他と違うことを確認したい。