「俺は、お前のこと嫌いじゃないぞ。つか、カッコイイって思ってるし……友達として最高って思ってる」

「うるさいな。余計なことまで言うなって言ってるのよ」


目元を乱暴に拭いながら、新見は俺の背中に蹴りを入れる。


「うおっ」


お陰で前のめりになり、すぐ傍にいたサユちゃんに寄りかかるような体勢になった。


「サトルくん大丈夫?」

「平気。……この方が新見らしくていい」


俺がそう言うと、新見は泣き笑いになった。


「先輩、夏目くんに告られた時と、中津川くんに告られた時は違いますか?」


サユちゃんは涙目のまま顔を上げて、新見の方を見る。


「……違う」

「どういうふうに?」

「サトルくんで、頭が一杯になっちゃった」


それを聞いて、新見がふわりと笑う。


「……それが好きっていうことですよ。先輩なのに子供みたい」


今や三角形になった立ち位置を、新見が更に大きく崩した。
夏目の首根っこを捕まえると、さっさと廊下の方に向かっていく。


「おい、なんだよ」

「帰るのよ。アンタ空気読めないの? この私がフラれるところを見たんだから、当然アンタ慰めるのよね」

「はぁ? なんで俺が。俺だってフラれたのに」

「うるさい、私のほうが傷ついてんのよ。いいからアンタの奢りでなんか食うわよ!」


けたたましく夏目を追い立てる新見は、ここまで来てもやっぱり男前だ。
視界から消えようとする彼女を、俺は勢いで呼び止めた。