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「サユちゃん先輩とどういう関係なんだよー」


気になっているのは夏目も一緒らしく、教室に戻るや否やそう尋ねられた。


「だから、俺とサユちゃんは……」


……なんなんだ? 俺達の関係って。
一言で済ますならやっぱり。


「……幼馴染だよ」


これが一番妥当だと思う。

ぶっきらぼうにそう告げると、夏目は目を細めて俺のことを睨む。


「嘘つけ、俺は中学2年間ずっと同じ委員会にいたけど、お前の話なんか一度も出てきたこと無い」

「そりゃ中学が違うからだろ」


そっけなく返事をしているつもりだが心中穏やかではない。
コイツ、サユちゃんの中学時代を知ってるんだ。俺の知らない、たくさんのサユちゃんを。

夏目は立ち上がると俺の腕を掴んだ。



「確かめに行こうぜ」

「は?」

「サユちゃん先輩に聞いてみるのが一番早ぇ、ホラ行くぞ」

「ちょ、待て夏目……」


その時、パコーンと清々しいほどの音がした。
隣の席の女子が持っていた下敷きが、特攻しようとした夏目の顔にぶつかったのだ。


「ってぇ」

「あんたら、うるさいんだけどさっきから。もうHR始まるわよ。どこに行く気?」


 クールな口調に似合いの切れ長な目が印象的な女子だ。まっすぐの髪は肩辺りで切りそろえてある。とはいえ真面目という印象もそれほどない。スカートは規定よりおそらく短いし、そもそもいくらうるさいとはいえいきなり同級生を下敷きで叩く女子って……。