いや、あの性格から考えるに、相談するにしても和晃だけは無いな。
最も弱みを握られたくない相手だろう。

だったらこいつは勝手に勘ぐっているのかな。
そういえば、あの噂が流れた頃から和晃の言動も、やたらに俺と新見をくっつけようとするもののような……。


「あっ」

「は?」

「噂、まさかお前が?」

「えっ?」


和晃は、口元をひくつかせてぎこちなく笑うと俺を廊下に引っ張りだした。肩を組んで小さな声でコソコソ囁く。


「ちょ、サトル。でかい声出すなよ」

「いや、だって。違うよな。お前じゃないよな。あの噂の出処」

「それは。……その、違うといえば違うし、違わないといえば違わないというか」

「はっきりしろよ。ふざけんなよ」

そのまま回した腕で首を閉めると、和晃は苦しそうに呻く。

「げほっ、お、落ち着けサトル」

「落ち着け無い。お前、軽い遊び心とか言ったらはっ倒すぞ」

「悪気があったわけじゃないんだ。お前ら結構似合うよなって、あのアイス買ってた時に思ったから二人きりにしようと思って珠子と先に帰ったんだよ。で、その途中で中村に会って。『新見さんは一緒じゃないの』って聞かれたから」

「から?」

「あ、明菜はサトルとデートってポロッと」


言ってんじゃねーか。
俺は再び和晃の頭を一叩きする。


「アホ!」

「ごめんって。でもまさか、週明けにあそこまでの噂になってるとは思わないじゃん! それに、なんとなくだけど明菜も嫌がってねーしさ」