「ああ、サユちゃん先輩。俺のこと見つけてくれたんだー」

「はぁ?」


思わず振り返る。
ちょっと待てよ、夏目信也。
今彼女が見つけたのは俺だって。


「サユちゃんのこと知ってんのか?」

「同じ中学だったもん。中津川こそ何で知ってんだよ」

「俺は……」


そんなこと、今こんなとこでダラダラ説明できるかよ。


「そこ、うるさいぞ」


担任のメガネにつつかれて、俺たちは黙り込む。
お前こそうるせーよ。俺は今、大事な話をしてるのに!

 とはいえ、静まり返った体育館でこれ以上の大騒ぎをするほど俺も馬鹿じゃない。

大人しく黙って、俳優の渡辺なんとかに似たイケメン中年な校長の長い話を聞きながら、先ほどの彼女を反芻しまくる。

サユちゃんだよな。
サユちゃん、俺のこと見つけてくれたんだよな。


それを素直に喜びたいのに、後ろで澄ました顔しているヤツが気になって仕方がない。


一体サユちゃんとどういう関係なんだよ、夏目!




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