なんとなく気分が乗らないまま、のんびりと登校していると後ろから肩を叩かれる。


「おはよ、サトル。今日は遅いじゃん」


元気な声は和晃のものだ。コイツがいるということは、と振り返ると、案の定新見と珠子がすぐ後ろを歩いている。


「おはよーう。サトルくん」


小首を傾げて、元気に笑う珠子。ペットみたいで癒されるな。


「しけた顔してんのね。昨日、彼女のとこ行ったんじゃなかったの」


しかし新見の冷たい発言に、癒やされた心はすぐに荒む。
行ったさ。行ったからこんなしけた顔になってんじゃねーか。


「行ったけど」

「それで言ったんじゃないの」

「言ったけど」

「ダメだったの? まさか」

「ふたりとも何言ってるのかちっともわからないよー」


俺と新見の会話に、珠子が眉を寄せて頭を抱える。
そりゃ他の人間にはわからないように固有名詞を入れずに話してるんだから、分かるわけ無いだろう。


「二人で通じあってんじゃん。邪魔したら悪いから行こうぜ、珠子」

「あ、和晃、待て―」


和晃の余計な茶々入れにより、なし崩し的に二人きりになり、気まずい感じはあれど目的地は同じなので一緒に歩く。
とりあえず聞かれたくない二人がいなくなったので、新見は含みトークを止め、具体的に聞いてきた。