「お父さんがそう言ってくれて、私とっても嬉しかった。私にとっては皆大事な家族だったから。だから、私も皆でマルでいいの。皆と、……仲良くしてたい」


小さく潤むサユちゃんの声。
頑なにその言葉を何度も告げる。まるで、自分がそれを崩したら、全てが壊れていくようにでも思っているかのように。


「だから夏目の告白は断ったの?」

「……うん。無理に誰かと付き合いたいとは思ってないの。だから……信也くんには悪いけど……」


だとすれば、俺が今告白しても、『友達でいましょう』と言われてしまうんだろうか。
木下だったら、別の答えがもらえるんだろうか。

尻すぼみな感じで黙ってしまった彼女を見る。
頭一つ分くらい小さな彼女を上から見下げているから、視界に入るのは丁度彼女のつむじ。
小さな頃は見上げていたはずの彼女は、いつの間にこんなにも小さく、頼りなくなったんだろう。
この手で包み込めてしまいそうな小さな肩に、甘酸っぱい衝動が湧き上がってきて、唾がこみ上がってくる。


今の話から考えるに、告白なんてしないほうがサユちゃんとは仲良くいられるんだろう。

そう思うのに、新見に押された背中の感触が消えない。

俺は皆でマルの中じゃ満足できない。
特別な場所、俺と彼女だけのマルを描きたい。


「ごめん」


俺の声が二人の間の空気を震わせる。