どんどん歩数を増やして、徐々に駆け足になりながら、胸に去来するのはサユちゃんの笑顔。


サユちゃんを、どうしたいか。

問われてようやく気が付いた。

サユちゃんに、心から笑って欲しい。
おじさんに見せるみたいな、安心した笑顔で。

俺は、それを見ているだけじゃ嫌なんだ。
“俺が”彼女を笑わせたい。俺が彼女の笑顔の元になりたい。
彼女の一番になりたい。



勢いよく走って駅まで行き、サユちゃんちの最寄り駅で降りる。
美術部のサユちゃんは、もう家に帰っているだろう。

サユちゃんとは、番号交換もメール交換もできてない。
話す機会はたくさんあったが、先輩だからってのもあって、気恥ずかしくて言い出せなかった。

だけど、母親同士が友達だから家の電話番号なら調べられる。

俺はまず家に電話をかけた。


『ハイもしもし』


電話越しの幼い声はルイだ。


「ルイか? 俺サトルだけど」

『お兄ちゃんどうしたの?』

「お前サユちゃん家の電話番号調べられる? 母さんにそれとなく聞いてさ」

『出来るよ。ちょっと待ってて』


電話の傍から離れた気配がして、「おかーさーん」と叫ぶルイの声が遠くに聞こえる。
待っている間に鞄からボールペンとノートを取り出した。

ジリジリしながら待っていると、戻ってきたらしく人の気配がする。