「俺、嫌われてんのかな」


ポツリと呟くと、今度はティッシュの箱の角で叩かれる。


「いてぇよ」

「いや、あまりにも馬鹿なんだもの」

「馬鹿だと思ってんなら叩くなよ。余計馬鹿になる」

「あらホントだー。それは悪かったわ」


そういう時だけあっさり肯定するのはやめてくれ。

いじけた気分で睨むと、新見は溜息をついてソファから立ち上がる。
叩かれた後頭部が、撫でられた。

俺は一瞬眼の前の出来事が信じられなかった。
撫でてるのは誰だよ。この、末恐ろしい女か?


「ちょ、お前、なんのつもりだ」

「えー、嫌がらせ?」

「おい!」


振り払えばいいのか迷っているうちに、新見の手は俺の頭の上から離れていく。


「葉山先輩が、中津川くんと顔を合わせないのは別の理由じゃないかしらね」

「別の理由?」

「そう。中津川くんさ、自分の気持ちで手一杯みたいだけど。さっきまで語ってないところに理由があるんだと思うんだけど?」

「語ってないところって」


他になにかあったっけ。


「ほら、私にアイスおごってくれた日、先輩に会ったじゃん」

「ああ」


確かに。え? でも。