「……なんか変だよね。やっぱ、葉山先輩に誤解された?」


新見は、いつもよりは静かなトーンで俺に話しかける。


「誤解ってか、色々ありすぎて俺はもう何がなんだか」

「何よ。またなんかあったの」

「あー、まぁなー」


新見は、普段あれだけ険があるのに、こういう時だけは話しやすい。
変な同情もされなきゃ、慰めも言われないからだろうか。
途中で変な茶々を入れてくるわけでもなく、ただ黙々と聞いては「ふーん」とか「で?」とか相槌だけを入れてくる。

途中で新見の母さんは気を使って席を外してくれ、俺はちょっとだけ弱音を吐くつもりが、結局洗いざらい話してしまった。

夏目と告白勝負をしたこと。
俺は負けて、勝った夏目が告白したこと。
その告白シーンを覗いていたのを、サユちゃんにばれたこと。
そして逃げ出してしまったこと。


「じゃあ、私にアイスをおごる前にそれだけの出来事があったのね?」

「そう。俺、サユちゃんに嫌われたのかな。今日は顔合わせてももらえないし」


頭を抱えて、一番の弱気を呟く。


「もし、夏目とうまくいってたりしたら、……俺」


立ち直れねーかも。と言う前に、新見の拳に後頭部を叩かれ前のめりになり、治療されたばかりのおでこが机に激突する。