俺が辺りを見回している間に、おでこには絆創膏がはられ、新見は手早く救急箱を片付け始める。
「ハイ、終わったわよ」
「なんか悪かったな。サンキュー。じゃ、俺は……」
立ち上がろうとする俺の肩を押さえつけて引き止める新見母。
「あらぁ、まだいいじゃない。お茶、飲んでって。なんなら食事も」
「あ、いや。メシはうちで作って待ってるんで……」
「じゃあお茶だけでも。明菜のお友達で男の子が来るの初めてなの」
「お母さん、和晃は男じゃないわけ?」
「あ、和晃くんもいたわね」
おばさんも優しそうな顔して和晃の扱いがぞんざいだった。
なんだか和晃が不憫すぎて泣けてくる。
「頂きます。あ、うまい」
さっぱりとした麦茶と、饅頭が結構合う。
俺は甘いお菓子は苦手なのだが、この饅頭はあんまりしつこくなくていい。
「あー、これ高いやつじゃん。お母さん何気張ってんの」
「だって。怪我させたんでしょう? お詫びはちゃんとしておかないと」
「でも中津川くんも一般人に迷惑かけてたからバチが当たったのよ」
お前が言い切るなよ。
俺は出された茶菓子を全部腹におさめた。満足感とともに息がフーっと漏れる。
すると同時に体中から力が抜けてきた。
まるで風船が萎んだ時みたいに、ブヨブヨになって腑抜けてしまった感覚だ。