アトピーのことを思うとほんとうに気がめいる。JRで亀岡へ。
電車の中で誰にもわからないようにして石を見つめた。輝きがない。

青緑色だ。石を手のひらに載せたままボーっと外を眺める。
「そうだきょうTAの発表がある」
そう思った瞬間手のひらの石はは急に明るくなった。

TAというのはテクニカルアシスタントの略で資格が要る。
去年1年間講習と検定にチャレンジしてその合格発表が
今日の午後にあるのだ。

早く単位登録を済ませて発表を見に行こう。自信は十分にある。
これに受かりさえすればTAのバイトが学内でできるのだ。

そう思うと勇気と希望がわいてきた。手のひらの石が明るく輝く。
そうか悲しい気持ちが楽しい気持ちに切り替わったとたんに
石の色が変化した。逆に石の色を塩化できれば、

どんな苦しい心の状態でも明るく楽しくコントロール
できるのではないだろうか。ではどうやって?
それは今まったく分からない。不思議な石だ。

自分だけの秘密の石だ。手のひらの石をぎゅっと握り締めて
大学へ向かった。はたしてTAには合格していた。
ところが人生何が起こるかわからない。

「小山内君あなた左目が少し変よ、見えにくくないですか」
そういわれて医務室にいった。すると担当医師は、

「小山内君、これは明らかに白内障だ。紹介状を書くから
大学病院でよく検査してもらいなさい。他が悪くなければ
手術は1日で済む」