笑って、笑って、呼吸がヤバくなるほど笑って、仏頂面の日向に背中を撫でてもらっていたヨコタさんは、やっと目尻に溜まった涙を拭った。
「ハ… ハハ…
‥‥‥
ありがとう。」
「…別に。
気にしないで。
笑い死なれても困るし。」
「や、背中さすってくれてるコトじゃなくて…」
冷たい口調に戻った日向に視線を送ったヨコタさんは、再び口元を綻ばせた。
一年五組で、日向は異質な存在だった。
彼女はいつもひとりぼっち。
寂しがっている様子もなく、平然と胸を張ってひとりぼっち。
誰かが話しかけても、大人びた表情で短い言葉を返すだけ。
幼い自分たちを、意識的に避けているのだと思っていた。
見下しているのだと思っていた。
冷たい人だと思っていた。
だが、今日の彼女は違った。
自分のコトでもないのに、必死になって。
自分のコトでもないのに、悲しんで。
自分のコトでもないのに、喜んで。
でもって、盛大に狼狽えて…
冷たくなんかないじゃん。
むしろ、優しいイイコじゃん。
極度の照れ屋なダケなんじゃん?