「由梨ちゃん」


朝日さんは少し息を切らしている。


「あの…、どうぞ。狭いところですけど」


戸惑いつつも私は、朝日さんを部屋に招き入れた。


小さなテーブルの近くに、そっと腰を下ろす朝日さん。


私は冷蔵庫からお茶を出しコップに注ぐと、テーブルの上にコトンと置いた。


音楽だけが鳴り響く小さな部屋。


私も朝日さんも、ただ黙って音楽を聴きながら、テーブルの上にあるグラスを眺めていた。


その沈黙を先に破ったのは、朝日さんだった。


「由梨ちゃん。

さっき嬉しかった。

由梨ちゃんが僕を好きって言ってくれたから…」


朝日さんの優しい瞳が、私に真っ直ぐ向けられている。


「朝日さん、あの…」


好きって言ったけど。


でも……。


「私、どうしたらいいんですか…?」


「由梨ちゃん…」


「怖いんです…。

これ以上、朝日さんを好きになるのが…」


目の前が涙で滲んでいく。


「一時の気の迷いなんだったら、もうこれ以上は無理です。

引き返すなら今しかないです」


ぽたぽたと涙が膝の上に落ちる。


どうしてこんなに涙が出るんだろう。


この頃、涙腺が緩くなってる。


止まらないよ。


声を殺して泣いていたら、私はいつの間にか朝日さんに抱きしめられていた。