季節はもうすっかり夏真っ盛りになっていて、朝の通勤だけで汗をかいてしまう。


そんな中でも、社長だけは違う。


高級車に乗って、いつも涼しそうな顔をしてお店にやって来る。


なんか、ムカつく…。


そんなある日のことだった。


朝のミーティングが終わった後、私は社長室に呼ばれた。


社長に呼び出されるのは久しぶりだ。


なんの用事だろう?


私は社長室のドアをノックして、扉を開けた。


「失礼します」


中に入るとすぐに、社長が私の事をじっと見つめて来た。


その視線に戸惑いつつ、私は社長のデスクの前に立った。


「水沢」


「はい」


社長の黒く澄んだ瞳が、私の動きを止める。


空気が明らかに張りつめている。


一体何を言われるの?


「お前、朝日達の披露宴の担当を降りろ」


「……っ」


ど、うして…?


「話は以上だ」


「えっ?あの、社長。どうしてですか?」


なんでそんな突然。


「理由は、特にない」


「そ、そんなの納得出来ません」


「新人に任せるより、谷口が適任だと判断しただけだ。もう持ち場に戻れ」


そんな……。