水沢が料理を運んで来た。


静かに食器を置く仕草は、どこか気品があり優雅だ。


俺はコイツに厳しくするが、それはコイツが仕事が出来るヤツだからだ。


見てないわけじゃない。


コイツの働きっぷりを認めているし、早く昇進させようと思っている。


「水沢、お前今日おとなしいな」


「はい?」


「朝日が来てるのに、何も話しかけないなんて」


俺がそう言うと、なぜか水沢は顔を赤らめた。


「ご、ごゆっくりどうぞ」


ペコリお辞儀をすると、水沢は足早に厨房へと戻った。


「なんだ?アイツ。

まぁいいか。

朝日、食べよう」


「あぁ…」


食事をしながら、俺は妙な違和感を感じていた。


それが何かはわからないけれど…。


「なぁ、夏樹」


「ん?」


「前から思ってたんだけど、夏樹って由梨ちゃんに厳し過ぎじゃない?」


「は?」


「あの子、すごくいい子だよ。

もう少し優しく接してあげればいいのに…」


「何だよ、それ。

俺は朝日とは違うんだよ。

大体、従業員に優しくする必要ある?」


「そ、そう言われると何も言い返せないけど…。

なんか、お前が優しくするのって、ありさだけだよね」


「え…?」


心臓がドクンと音を立てる。


「ごめ…ん」


朝日が視線を落とした。


「あ、いや…。別にいいよ…」