「この前はありがとう」


「はい?」


「飲むの、付き合ってくれて」


え、えぇ~~~?


い、今さら?


あれからもう何日経ってると思ってるんだろう。


「おかげで一人で塞ぎこまなくてすんだ。

お礼を言おうと思ってたんだが。

なんだか言うチャンスっていうか、いつのタイミングで言っていいかわからなかった…」


「社長…」


そうだったんだ。


私、避けられてるのかと思ってたのに。


社長は『ありがとう』って言うタイミングを見計らってたんだ。


なに、それ。


なんか可愛い。


「ふふっ」


思わず吹き出してしまった。


「なんだよ。なんで笑うんだよ」


「だって、社長。

そんなこと、すぐ翌日に言ってくれればいいのに、一体何日かかってるんですか」


私の言葉に、社長が少し顔を赤らめた。


「お礼とか言うの、照れるんだよ」


そんなことを言う社長が面白くて、ますます笑ってしまう。


「なぁ、水沢」


「はい」


「今度は外に飲みに行こう」


「え…?」


トクンと心臓が優しい音を立てる。


「社長室じゃなく、外で飲もう。

ちゃんと食事もしながら」


社長…。


私…。


「……はい」


すごく。


すごく嬉しいです。