「この前のお礼がしたいんだ。何か作るよ。パスタとかどう?

あ、イタリアンレストランで仕事してるから舌が肥えてるかな?」


「そんなことないですよ。家庭で作るパスタも大好きです」


「じゃあ腕を奮おうかなー。あ、その前にちょっとこれ聴いてくれる?」


そう言って朝日さんが、音楽ルームのパソコンの前に行く。


私も一緒に付いて行った。


なにやら画面を開く朝日さん。


ボタンをクリックすると、音楽が鳴り始めた。


「ここ座っていいよ」


朝日さんにそう言われて、パソコンの前の椅子に座った。


わ…。


優しい音色。


いい曲だ。


思わず目を閉じる。


「いいですねぇ、この曲」


「今作ってる曲なんだ」


「これ、いいじゃないですか。披露宴で流しましょうよ」


「ホント?じゃあ、そうしようかな」


しばらくうっとりとその曲に耳を傾ける。


音楽って作る人の人柄が表れるのかな。


朝日さんって爽やかで優しくて、初夏のような人だ。


その音色に聴き入っていると、トンと唇に何かが当たった。


ビックリして目を開けると、私のすぐ目の前に朝日さんの顔があった。


えっ?


こ、これってもしかして…。


キ、キスされてる?


朝日さんが首を反対側に傾ける。


柔らかい唇が、私の唇に優しく触れる。


そして、ゆっくり離されて。


私と朝日さんは息がかかりそうなほど近い距離で、目を合わせた。