なんだかすごく不思議な気分だ。


急に自分が女の子になったような気がする。


私は朝日さんとカフェに入り、まるでカップルのようにコーヒーを飲んだ。


デートなんて生まれてこの方したことなんかないし、私の胸はずっとドキドキしっ放しだった。


朝日さんとは話が絶えなかった。


音楽の話やサイクリングの話。


いくらでも会話が弾んだ。


「あ、そうだ。

由梨ちゃんのi podにあのCD入れなくちゃ。

そろそろ僕の家に戻ろうか」


気がつけばもう5時を過ぎていて、私達は朝日さんのマンションへと戻った。


部屋に着くと、早速朝日さんがi podに曲を入れてくれる。


私は被っていたカツラを外した。


「外は暑いから、さすがにムレましたー」


髪がペタッとなって、ちょっと恥ずかしい。


「なんなら髪洗う?

ウチの洗面台、頭洗いやすいよ」


確かに臭うとイヤだし、そうさせてもらおうかな。


私はお言葉に甘えて、洗面台をお借りすることにした。


「このシャンプー使って」


そう言って渡されたシャンプーは、見たこともないようなパッケージのもので。


私はシャワーを出して、髪を濡らした。


このシャンプーってなんだか朝日さんみたいな爽やかな香りがする。


「ありがとうございました。さっぱりしました」


髪を洗い終えて洗面所から出ると、朝日さんはキッチンに立っていた。


「ドライヤー使っても良かったのに」


「短いからすぐ乾くんです。

いいですよ、このままでも」


「そう?あ、i pod入れておいたから」


「ありがとうございます」


i podも受け取ったし、そろそろ帰ろうかな?


そう思っていたら。


「夕飯どうする?」


「えっ?」


意外な言葉に目を見開いた。


うそ。


私、まだここにいていいの…?