「由梨ちゃんって、気になるアーティストを片っ端から聴くタイプなの?」


「あー、えっとですね。

まず気に入ったアーティストがいるとするじゃないですか。

そしたら私、この人は誰に影響を受けたんだろうっていうのを探っていくんです。

そうやって過去をさかのぼりつつ、横に広げつつって感じで増やしていきました」


「あーなるほどね。いい聴き方だ」


二人で私が入れた曲に耳を傾ける。


なんだか、すごく居心地がいい。


こんなふうに誰かと一緒に、音楽を共有するのは初めてだ。


私はCDの棚に目をやった。


わーこれ、前から一度聴いてみたかったヤツだ。


レアでなかなか手に入らないのに。


「朝日さん、これ貸してくださいよ」


「どれ?あぁ、それ?さすが目の付け所が違うね。
いいよ。このi podに入れてあげるよ」


「ホントですかー?ありがとうございます。やったー。うれしー」


すごい。


ラッキーだなー。


なんかここにいると楽しい。


「ん?」


これなに?


CDの横にある大きな箱。


なんか毛みたいなのが飛び出してる。


「朝日さん、これ何ですか?」


「あ…」


朝日さんが苦笑いする。


「それ、カツラなんだ」


「はあ?」


カツラ???