「あ、そうだ。由梨ちゃん音楽好きなんでしょ?ちょっとコレ聴いてみてくれない?」


そう言って、朝日さんがi podをジャージの胸ポケットから取り出した。


「ちょっと待ってね。えっとー、コレだ」


何やら曲を選択する朝日さん。


しばらくすると、i podを私に差し出した。


渡されたイヤホンを、耳に当ててみる。


「あー、アシッドジャズ調ですね」


「おっ、わかる?さすがだね」


「ベースがむちゃくちゃカッコイイですね」


「本当?打ち込みに苦労したんだー」


「えっ?これ打ち込みなんですか?」


「そ。僕が作った曲」


「すごっ、朝日さんすごいですね。さすが作曲の先生です。あ、ここのフレーズ好きです」


「ん?どこだろ。サビかな?」


「サビです」


「あー思い入れあるんだよー。わかってくれて嬉しいよー」


朝日さんが子供みたいに無邪気に笑う。


そうだよね。


自分の作品を気に入ってもらえたら、誰だって嬉しいもんね。


曲が終わったので、私は朝日さんにi podを返した。


「はー、かっこよかったですー。こんなの作れる朝日さんを尊敬します」


「ありがとう、嬉しいよ。
じゃあこれ、クライアントに提出しても大丈夫かなあ?」


「絶対大丈夫ですよ。こんなに素敵なんですから」


ホントにすごいと思う。


さすがはプロだ。


「あ、そうだ!由梨ちゃん」


「はい?」