「おやじの許可が下りたら、すぐに結婚しような」


「うん…」


「あ、新婚旅行どこがいい?」


「えー、気が早いよー」


「いいじゃん。決めてたら楽しみだろ?
なぁ、どこがいい?どこでも連れてってやるよ」


「うーん…」


どうしようかな…。


あっ、そうだ!


「私イタリアがいいな。

夏樹さんが学生の頃行った場所に、私も行ってみたい」


あの写真、すごく綺麗だったもの。


間近で見てみたいな。


「おっ、それ良い考えだな。
俺も行きたいって思ってたんだ。
長い休みもらって、色んなところ回ろうな。案内してやるよ」


夏樹さんがにっこり笑う。


それはすっごい楽しみだなー。


でも、その前に大阪で頑張らないといけないけど。


はぁ…。


なんか急につらくなって来た…。


「どうした?急に顔が曇ったけど」


夏樹さんが私の顔を覗き込む。


「うん…。そんな幸せな日々はまだまだ先なんだなって思ったら、さみしくなって…」


頑張るって決めたのに。


ちょっと、弱気になってしまうな…。


「ごめんな。

今さらだけど俺、おやじの会社継がなきゃ良かったって思うよ。

普通の会社員だったら、今すぐにだって結婚できたのに…」


夏樹さん…。