夏樹さんが、私の肩を抱き寄せてくれる。


私は夏樹さんの肩に頭をもたれて、指にはまった指輪を眺めた。


「もう覚悟は出来たけど、本当は行かせたくないんだ…」


夏樹さんがふぅとため息をつく。


「俺な…。
この前、由梨が妊娠したかもしれないって思った時、実はすげー嬉しかったんだ」


「え…?」


「これで今すぐ由梨と結婚出来るって思ったんだ。
だから、ホントだったらいいのにって…。
でも違ってたから、正直ガッカリした」


「夏樹さん…」


そんなこと思っていたの?


知らなかったな…。


「俺さ、弟とか妹が欲しかったけど、母さんが身体弱かったから、俺一人が限界だったんだ。
だから、自分の子供は沢山欲しいんだよな」


そうか…。


夏樹さんのお母さんは身体が弱かったから、だから一人っ子だったんだね。


「由梨、兄弟は?」


「私は弟と妹がいるの。

弟は高校三年、妹は高校一年だよ」


「えっ、まじで?下に二人もいたんだ」


「うん」


「そうか。なんかちょっと嬉しい。

それにしても…、由梨はやっぱり長女か。

しっかりしてるもんな」


そ、そうかな?


しっかりしてるかな…。


「由梨だったら、沢山産めそうだよな。タフだし」


「えぇっ?」

 
ちょっ、沢山って…。


「いっぱい作ろう」


も、もう。


夏樹さんてば…。