そう思って、緊張しながら出社した。


社長はあれからすぐに目を覚ましたのだろうか。


案外まだ寝ていたりして。


昨日と同じスーツにボサボサ頭じゃ、従業員が変に思うよね。


大丈夫なのかな。


起こせば良かったかな。


そんなことを考えながら制服に着替え、厨房へと向かった。


「おはよー、由梨。
なんか今日、顔むくんでない?」


「えっ?あぁ…、ちょっと寝不足よ」


「ふぅん」


沙希には絶対言えない。

 
社長と朝まで社長室で眠ってた、なんて……。




「おはようございます」


社長の声がして、ドキッと心臓が跳ねた。


いよいよお出ましだ。


どんな姿なんだろうと振り返ると、その姿にぎょっと目を見開いた。


うそ、なにあれ?


せつない顔を見せていた社長は、どこ吹く風。


綺麗なスーツをビシッと着て、昨日酔って社長室に泊まっていたとはとても思えないほどにクール。


淡々とミーティングをする姿は、いつもと何も変わらない。


内心、昨日のスーツのまま出て来る社長を期待していたんだけど。


しっかり家に帰って来たんだね。


なんか拍子抜けだな。