新幹線の車窓から、東京の街並みが見える。


私と夏樹さんは駅で買ったお弁当を食べていた。


「せっかく東京に来たのにごめんな。なんかうまいもの食べさせてやりたかったんだけど」


夏樹さんが申し訳なさそうに眉を曲げる。


「ううん。このお弁当だっておいしいよ」


「そう?そのわりに箸が進んでないけど…」


「そんな事ないよ~」


そう言って、ごはんを口に運ぶ。


だけど、本当は食欲なんてなかった。


「年明けから俺、忙しくなるな。

でも頑張るよ。由梨と結婚するために…」


あの後オーナーは夏樹さんに、東海地域をきちんと管理することを結婚の条件として提示した。


「絶対認めさせてみせるよ。由梨がそばにいてくれたら、俺は頑張れる」


夏樹さんは、オーナーが私に出した条件をまだ知らない。


もしそれを聞いたら、夏樹さんは何て言うだろう。


「由梨、どうした?疲れた?」


夏樹さんが私の顔を覗き込む。


「うん、ちょっと。緊張したせいかな?」


「少し休みな。肩貸してやるから」


「ん…」


私は夏樹さんの肩にもたれた。


夏樹さんの甘い香りがする。


その香りに泣きそうになる。


3年って、長いよね。


もしその間に、夏樹さんに他に好きな人が現れたら?


私の事、忘れちゃったら…?


夏樹さんと暮らし始めて、毎日がとても楽しかった。


付き合い始めてからは、本当に幸せ過ぎた。


それを急に3年も離れるだなんて…。


夏樹さん、私は耐えられる自信がないよ…。