夏樹さんが出て行った後の社長室はすごく静かで、空調の音だけがやけに耳に付いてしまう。


あぁ…緊張する。

 
オーナーは私に、一体何の話があるのだろう。


「すごいね、夏樹。あんなにムキになって怒って。水沢さんの事が大好きなんだね」


そう言って、オーナーがクスリと笑う。


う~、なんだか恥ずかしい。


「水沢さんの事は学生の頃から良く知ってるし、仕事も良く頑張るし、性格も素直で良い子だし。

そんなキミと夏樹が付き合ってるなんて、とても嬉しいよ」


オーナーは優しくにっこりと笑った。


「僕はね、妻を早くに亡くしてるんだ。

すごくつらかったし、夏樹にも寂しい思いをさせてしまった。

だから、夏樹が結婚する相手に条件を付けるとしたら、健康な女性であること。

ただ、それだけなんだ」


え…?そうなの?


「そういう意味じゃ、キミは体育科を出ているだけあって、とても丈夫で健康そうだし。
申し分ないよ」


本当に?


じゃあ、認めてもらえるのかな?


「んー、だけどね」


「はい?」


「今すぐ結婚っていうのは、ちょっと認められない」


「え…?」