「由梨。誰に聞いたか知らないけど、お前を大阪の店になんか絶対やらないから。
大丈夫だ。心配するな…」


そう言って、頭を撫でてくれるけれど。


「じゃあ、どうして…。

どうして夏樹さんはそんなに元気がないの…?」


いつも泣きそうな顔をして。


朝まで私を絶対離さないのは、どうして?


「由梨…」


「はい」


「入籍…しようか」


「えっ?」


意外な言葉に、ドクンと心臓が跳ね上がった。


「結婚してしまえば、夫から妻を引き離すような事、絶対出来ないだろう?」


「夏樹さん…」


そう言ってくれるのは、すごく嬉しいけど…。


「夏樹さん、入籍はまだ早いよ。

私の親にも会ってもらわなきゃ…」


私がそう言うと、夏樹さんがフッと鼻から息を吐いた。


「だよな…。俺、何を焦ってるんだろう」


まただ…。


また夏樹さんが、あの悲しい目をする。


この目をする夏樹さんは見たくないのに…。


「実は俺さ、おやじに逆らったことが一度もないんだ…」


「え…?」


うそ…。


それは、ちょっとビックリだ。


そんな男性が世の中にいるなんて。