「もう帰っていいですか?明日も仕事ですし」


もうすぐ23時だし、お風呂に入って寝たいよ。


「……行くのか?」


「えっ?」


何?そのさみしそうな顔。


またからかってる?


「社長だって明日早いじゃないですか。

もう帰って寝た方がいいですよ」


そう言い放ってスッと立ち上がると、私の腕をぐっと握り締める社長。


その力強さに、心臓がドクンと跳ね上がった。


「行くな」


「はい?」


「もう少しいろ」


「ちょっ、えっ?」


「俺を一人にするな」


な、なんなの?この人。


「頼むから。そばにいてくれ……」


……もう。


ズルイよ。


そんなせつない瞳で、私のこと見ないで。


断れなくなるの、わかってて言ってるの?


自分がそう言えば、女はみんな従うとでも?


なんか悔しい。


「……あと少しだけですよ」


そう言うと社長はにっこり可愛い顔で笑った。


社長ってこういう顔もするんだね。


知らなかったな。