「なぁ」


依然私の頭に手を置いたままの社長が言った。


「変えてやろうか?」


「変えるって……、何をですか?」


「俺がお前をいい女に」


「あのー、おっしゃっている意味が全然わからないんですけど…」


「好きなやつに好きって言ってもらいたいんだろ?

俺が変えてやる。

酒に付き合ってくれたお礼だ」


グラスをテーブルの上にコトンと置き、私の顔をじっと見つめる社長。


その真っ直ぐな瞳に、無意識に身体が後退したその直後。


急にぐらりと視界が揺れて、背中に軽い振動が伝わった。


「ちょっ、えっ?」


何これ?どういうこと?


社長の両手が、私の顔のすぐ横にあって。


目の前には私を見下ろす社長。


これってもしかして、押し倒されてる?


こんな近くで社長を見るのを初めてだ。


綺麗に整った顔。


セクシーな瞳。


どうしよう。


ドキドキする。


「いい顔だ」


「え…?」


「赤らめる顔が、なかなかいい」


そう言われて、ますます顔が赤くなっていく。


「いいな、お前の反応。

磨き甲斐がありそうだ」


「い、いいですよっ、そんな」


「遠慮するなって」


不敵な笑みを浮かべる社長。


「遠慮なんてしてませんよ。

社長、酔い過ぎです。

キャラ変わってますよ。

悪い冗談はやめてください」


とにかくそこからどけて欲しい。


恥ずかしくて、もう心臓がどうにかなってしまいそう。


ブンブンと首を振って本気で嫌がっていたら、社長が急に口をへの字に曲げた。


「ちぇっ、せっかく面白かったのに」


さも残念そうに、しぶしぶその場から離れる社長。


私はすかさず起き上がった。


なんか息がゼーゼー言ってしまう。


お、面白いって何?


からかわれてるんだ。


クソー。