「お前、コイツの事狙ってただろう?」


ギロリ目を細めて問いつめれば。


「えぇっ?ち、違いますよっ」


必死に否定する林。


「違うなら、何をそんなに動揺してるんだ?」


「うっ…」


顔真っ赤にしちゃってよ。わかりやすいヤツ…。


「やっぱりな…」


思わずため息が出た。

 
由梨にはもう少し、自覚を持ってもらわないといけないな。


「でも、口説く前にあっさり失恋しちゃいましたよ。つい最近、彼氏が出来たみたいなんで…」


まぁ、正式には昨日だけどな。


悪いな、林。


「とりあえず、もう店出ようか」


会計を済ませると、俺と林は二人で由梨を抱えながらお店を後にした。


「林。俺コイツ背負うから、ちょっと支えてて」


林に由梨を支えてもらっている間に、俺は由梨の前に回り込んで由梨を背負った。


そして、ゆっくり歩き出す。


う~。そんなに重くはないけど、疲れているせいか体力的にちょっと厳しいかも?


「社長、大丈夫ですか?僕が背負いますよ」


林が心配そうに俺を見ている。


「いや、大丈夫だ」


本当はちょっと厳しい状態だけど、あくまでクールに答えた。


誰が他のヤツに背負わせるか!


由梨のこの胸がお前の背中に当たるなんて、絶対に許せない。


「社長、どこに向かってるんです?」


「あ?うちの店だよ。俺の車まで運ぶ」


「えっ?社長、水沢の家知ってるんですか?」


「…まあな」


知ってるも何も、俺の家だし。