「私が好きになる人は、私のことなんて好きになってくれませんよ。

いつだってそうなんです。

男の人は、綺麗な女の人の事を好きになるんです」


そう。


ありささんみたいな…。


「ふぅん。じゃあ、俺と同じだな」


「え…?」


「好きな人に、好きになってもらえない」


社長がフッと笑う。


「そんなっ。社長はモテるから、私とは全然話が違うじゃないですか」


私が口を尖らせていると、社長がゆっくり身体を起こした。


「さっきも言ったろ?

本当に欲しいものが手に入らないなら、他のものはむなしいだけ」


「社長…」


あなたって人は本当に……。


「ありささんって罪な人だわ」


「ん?」


「社長がこんなに思ってるのに、全然気づいてないんだもの。

幸せそうな顔を見せて、何も知らずに社長を傷つけてる。

そんなの社長がかわいそう」


こういう痛み、私にはすごくわかるから。


だから、なんだかせつなくなった。


「お前、いいヤツだな」


社長が私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。


その感触に一気に顔に熱が帯びた。


「そんなこと言ってくれるヤツ、今までいなかったから。

嬉しいよ。ありがとな」


そんな。


急に優しい言葉をかけないで欲しいな。


どうしていいか、わからなくなるから…。