ディナータイムの最後のお客様も帰られ、事務処理を必死で終わらせた俺は、谷口に戸締りを頼んで店を出た。


由梨はもうとっくに家に帰っているよな。


俺も早く帰ろう。


それにしても、初めての子ってどうしてあげたらいいんだろう。


緊張しているだろうし、雰囲気作りが大事なんだろうか。


多少アルコールの力を借りた方がいいかもしれないな。


何か買って帰ろう。


そんなことを思いながら車に乗り込んで、エンジンをかけた時だった。


「あ゙ぁ~っ?」


一瞬目を疑った。


俺の目の前に見えているのは、どう見ても由梨の自転車。


どうして…?


アイツ、バスで帰ったのか?


不思議に思った俺は、早速由梨に電話をかけた。


だけど、何度かけても由梨は出ない。


しつこいくらい何度も鳴らしてみたけど、やっぱり繋がらなかった。


まさか店を出た直後に、由梨の身に何かあったんじゃ…?

 
俺はとりあえず自宅へと車を走らせた。




車をブッ飛ばして慌てて家に帰ったものの、部屋の中は真っ暗で由梨の姿はなかった。


アイツ、どこ行ったんだよ。


相変わらず電話は繋がらなくて、イライラがピークに達していた。


ん?待てよ?


もしかして、昼間俺に言われたことに怖気づいて避難しているとか?


マジでそうかもしれない。


「由梨…」


一体どこにいるんだよ!