「じゃあ、お疲れー」


林さんとグラスを合わせ、お酒を口にした。


仕事上がりの一杯って、どうしてこんなに美味しいんだろう。


私と林さんは焼き鳥をつまみながら、しばらく黙々と飲んでいた。


あぁ、なんだかこうしていると落ち着く。


すっかり、まったりしていたところへ。


「ねぇ、家に帰りたくないって言ってたけど、どうして?」


林さんにいきなり聞かれて、飲んでいたお酒を噴き出しそうになった。


「あ、えと…。ちょっと、いろいろあって…」


「なんだよー。秘密主義?」


「そ、そういうわけじゃないんですけど」


だって社長に会いたくないなんて、口が裂けても言えないもの。


「水沢ってひとり暮らしでしょ?帰りたくないって、一人がイヤとか?」


「まぁ、そんなところです…」


「ふぅん…」


林さんでも色々質問するんだね。


何も聞かれないと思ったから、一緒に飲みに来たのに。


「なんか最近、水沢綺麗になったよね」


「えっ?何ですか、それ」


「実は厨房スタッフみんなで話してたんだ。最近やけに色っぽいって」


うそっ。みんなでそんな話をしていたの?


知らなかった…。


「ねぇ、もしかして彼氏でも出来たんじゃない?」


「うっ」


「だろ?」


人懐こい笑顔で言われると、なんだか嘘が付けなくて。


私は戸惑いつつも、コクリと頷いてしまった。