「一杯くらい飲もうよ。前はみんなでよく行ってたじゃん。久しぶりに飲みたいよ」


うーん。一杯くらいならいいかなあ…。


「そ…うですね。わかりました。行きましょうか」


「うん。じゃあ仕事上がったら、駐車場で待ってるな」


コクリ頷くと、林さんは笑顔で厨房へと戻って行った。




20時に仕事を終えて着替えて駐車場に出ると、林さんはすでに外で待っていた。


「お疲れ様です」


「おう、お疲れ」


しゃがんでいた林さんが、ゆっくり立ち上がる。


林さんはひょろっと背が高くて、なんだかぬぼっとした雰囲気の人。


髪の毛も少し長めでボサボサで背筋も曲がっていて、いつも眠そうな顔をしている。


でも、癒し系ですごく優しい人だ。


「どこ行く?岩ちゃんで焼き鳥でも食べる?」


「そうですね。ちょっとだけ飲んで帰りましょう」


私達は徒歩圏内で行ける、近所の居酒屋を目指した。


「へい、いらっしゃい」


お店に入るとすぐに、おやじさんが威勢の良い声で出迎えてくれる。


カウンター席のみの小さな居酒屋。


ちょうど2席空いていたので、私達はそこに座った。


「二人とも久しぶりだね。飲み物は何にする?」


「俺はビールで。水沢は?」


「えっと、私はウーロンハイで」


「了解ー」


以前からお店のみんなでよく利用していたから、おやじさんには顔を覚えられているようだ。