それでも夏樹さんは、私の手首を押さえつけて離さない。


吐息がかかりそうなほど顔が近くて、なんだか目眩がしそうだ。


どうしちゃったの?夏樹さん。


ここ、職場なのに…。


「由梨、覚えておけ。俺は独占欲が強いんだ」


「え…?」


「嫉妬もすごい」


嫉妬?

 
やっぱりやきもち焼いてたの?


林さんはただの同僚でしょうが!


「由梨、今夜だ」


「はい?」


何?今夜って。


「今夜、お前の初めてをもらう」


「なっ」


そ、それって…。


それってもしかして…!


「覚悟するんだな…。

早めに帰るから、シャワー浴びてベッドで待っとけよ…」


突然耳元で囁かれ、思わずぎゅっと目を閉じた。


「よし、もう行っていいぞ」


夏樹さんは急に笑顔になり、やっと手首が離された。


うー、今の言い方!


またリリーちゃんの扱いだ。


「し、失礼しました」


私はガクガクする膝を引き摺って、社長室を後にした。


夏樹さんって、ヤキモチ焼きだったんだ。


そんな感じはしていたけど、あれくらいで機嫌が悪くなるとは…。


あれ?


さっき私、何て言われた?


今夜、私の初めてがどうとか。


う、うそでしょ?


ど、どうしよーーーー!!!