「ちょっとこっちへ来い」


そう言って夏樹さんは私の腕を引き、書庫の影に押しやった。


な、何?


何なの?


夏樹さんが私の顔をじっと見つめている。


こ、怖い。


怒ってるの?


ドキドキしていると、いきなり壁に手首を押さえつけられた。


「えっ?あの…」


「由梨」


職場で名前を呼ばれると妙な感じがして、ゾクッと背筋に何かが走った。


「お前、林とやけに仲がいいんだな」


え…?なにそれ?


「しかもお前、他の男性社員にも優しいって?」


ん…?もしかして夏樹さん…。


「今まで気にしてなかったけど、何だ?アイツら。お前のことエロい目で見やがって」


「は…?」


「…くしょー。ムカつく…」


あのー夏樹さん、何を言って…。


ワケがわからず首をかしげていたら、夏樹さんの顔が近づいて来ていきなり唇を奪われた。


「ん、んんっ」


あまりに突然のことにビックリして、反射的に抵抗してしまう。


だけど手首がしっかり抑えつけられていて、さすがの私もどうしようも出来ない。


ぴったり押し当てられた熱い唇に、息が苦しくてたまらない。


あまりに苦しくて涙目になっていたら、夏樹さんがそれに気づいたのか唇をゆっくり離した。


私はすっかり息が上がってしまった。