夏樹さんが去った後の厨房は、次第にいつもの雰囲気に戻っていった。


「社長、なんだったんだろうねー」


沙希がぽつり呟いた。


「昨日から様子がおかしいよな。

急に怒って帰ったり、みんなとまかない食ったり」


林さんが不思議そうな顔をしてる。


「確かに最近、私達ちょっとたるんでいたかもしれないわね。

スタッフがちゃんと動かないから、きっとイライラしてるんだわ。

それで、様子を見に一緒に食べようと思ったんじゃない?」


谷口先輩の言葉に、みんながうんうんと頷いている。


「水沢、あんた早く社長室に行った方がいいわよ。

じゃないと社長、余計に機嫌が悪くなるわ」


谷口先輩に促され、私は仕方なく立ち上がり、社長室を目指した。


うぅ~。一体何なの~?


なんで呼び出したりするの~?


家でも会えるのに、そんなに急ぎのこと?


社長室の前に止まり、私はコンコンとドアをノックした。


「どうぞ」


夏樹さんの声が聞こえたので、私は恐る恐る扉を開けて中へと入った。


ゆっくりと歩いて、夏樹さんの机の前に立つ。


「あのう…、社長。お呼びでしょうか」


私が小声で言うと、夏樹さんはスッと立ち上がった。