制服に着替えて沙希と厨房に向かうと、厨房スタッフが何やらおしゃべりで盛り上がっていた。


「どうしたんですか?なんだか盛り上がってますねぇ」


沙希が興味津々にみんなに詰め寄る。


「あぁ、昨日の社長の話をしてたんだよ」


ん?夏樹さんの話?


「昨日の社長、荒れてたよなー」


厨房スタッフの林さんが苦笑いをする。


荒れてた…?夏樹さんが…?


「ごめーん。それ、あたしのせいだ。

昨日、谷口先輩も由梨もいなかったから、ホールが回らなくて大変だったのよ。

だから、機嫌が悪かったんでしょう?」


沙希が申し訳なさそうに両手を合わせた。


「いやー、それくらいであんなに怒る?

いきなり拳をここに叩きつけてさ。

“早退する!”って言って、突然帰ったんだよ。

あんな社長初めて見て、みんな固まったんだよ。

相当怒ってたんだぞー」


シェフの橋本さんが腕を組んで力説している。


昨日、そんなことがあったんだ…。


なんでいきなり怒り出したんだろう。


今度、聞いてみようかな。


そんなことを思っていたら。


「おはようございます」


夏樹さんが、厨房へ入って来た。