「由梨」


私を呼ぶ夏樹さんの低い声に、ハッとして振り返った。


夏樹さんは黒のTシャツと、ゆるめのグレーのズボンを履いている。


私の横にゆっくり腰掛ける夏樹さん。


「早速だけどさ…」


夏樹さんが怪しげな目でにっこり笑う。


意味がわからずきょとんとしていると、突然膝の下に手を入れられた。


「ひゃあっ」

 
ぐらり視界が揺れ、びっくりして夏樹さんの肩にしがみつく。

 
夏樹さんは私を抱き上げると、そのまま自分の部屋へと歩いて行き、ベッドに横たわらせた。


あまりに突然の出来事に、私の心臓は一気にヒートアップしてしまう。


夏樹さんがベッド横のサイドテーブルに置かれたライトのスイッチを入れ、私の隣にゴロンと寝転がる。


私を見つめる優しい目にドキドキしていたら、そっと背中を抱き寄せられた。


お風呂上がりの夏樹さんはぽかぽかあたたかくて、石鹸のいい香りがする。


「由梨…」


優しい声で呼んで、何度も私の髪を撫でてくれる。


私も夏樹さんの背中に腕を回した。


「良かった…、俺。

雷がすげぇ怖かったけど、お前に会いに行って…」


夏樹さんの言葉に、胸がキュンとしてしまう。


「怖かったでしょう?
すごい音がしてたから、ずっと心配だったんです…」


私でもビックリするような音だったから、夏樹さんはどれだけ怖かっただろう。