好きと言葉にした途端、心が震え、身体が震える。


「由梨…、本当に?

本当に俺のこと…?」


溢れる気持ちはもう止められなくて…。


コクリ頷いた途端、夏樹さんに引き寄せられた。


「由梨…っ」


あぁ、この腕、この胸だ。


一番ホッとする場所。


どうして今まで気づかなかったの?


こんなに身体中が夏樹さんを全身で好きって言っていたのに…。


「嬉しい…。俺、すげぇ嬉しい」


いくら抱きしめても足りないような、そんな気持ちになる。


この思いをどう表現していいか、わからないほど。


だけど、ふとよぎる朝日さんの笑顔。


私は最低のことをしている。


ありささんと別れて、私を選んでくれたのに……。


「夏樹さん…。私、気持ちに気づくのが、遅過ぎました。

朝日さんを裏切るようなマネは…出来ません…」


雨で冷たくなった夏樹さんのスーツにぎゅっとしがみつく。


その冷たさに、自分の心も冷静さを取り戻していく。


「由梨、バカなこと言うなよっ。
やっと思いが通じ合えたのに、今さら俺が手放すわけないだろう?」


ゆっくりと夏樹さんを見上げる。


夏樹さんの瞳に私が映っている。


震えた猫みたいに、今にも泣きそうな顔をして…。